減量を目指す場合、大抵の人は食生活を改善して運動量を増やすものですが、人口の多い都市の場合、減量化ソリューションはそう単純ではありません。住民や自動車から建物やインフラ、そして食料、水、燃料等の消耗品に至るまで、都市の重量化は世界各地で進んでおり、アメリカ地質調査所の地球物理学者であるTom Parsons氏は、自身の故郷であるサンフランシスコ市の重量が、公共施設、道路、橋を除いても1兆6000億キログラムに上るという試算を最近発表しました。およそ2億9000万頭のアフリカ象に相当する重さです。
2050年までに世界人口の7割近くが都市部で暮らすようになると見られており、各国の都市の重量化は様々な環境的および社会的な課題を生んでいます。従来の建設資材から木材に変えることで状況は改善するでしょうか。
都市の重量化が環境に及ぼす影響
ひとことで言えば「地盤沈下」です。地盤沈下とは、地下の動きが原因で地面が沈む現象のことです。これには自然的なものと人為的なものの両方があり、自然的なものの例として水の移動が引き起こす地下洞窟の形成が挙げられますが、地下水の採取や都市化等、人間活動によって生じるケースが増えています。「大きな建造物を建てたら沈下することは避けられず、その深さは決して小さくありません[20~30 mm以上]。しかし一旦沈下すると、その時点で一定の状態が保たれます」とParsons氏は述べています。「しかし、土壌が粘土質であればさらなる沈下が継続し、それが永久に続いて建物が沈下し続ける可能性もあります」
デルタ地帯に位置していることに加え、海面上昇およびそれによって生じる洪水に対する脆弱性を抱えているサンフランシスコのような沿岸都市にとって、これは特に問題です。たとえば、サンフランシスコのミレニアムタワーは過去10年間に400ミリメートル以上沈下したと試算されています。一方インドネシア政府は、過去20年間で2メートル以上の沿岸部の沈下を経験し、ジャカルタから首都を移すことさえ検討しています。「湖や海岸等の汀線に近い場合、事態はさらに深刻です」とParsons氏は言います。「しかし高地の都市であっても、地盤沈下が起きれば水系模様が変わり、下流に影響を及ぼします」。
ミクロで見た場合、土台にズレが生じることで建物や人家が損傷を受ける可能性がありますが、マクロで見た場合、洪水、湿地帯の汚染、土壌浸食を引き起こすおそれがあります。そしてこのような想定外の被害への対策が、環境的影響の悪化につながることもあり得るとParsons氏は警告しています。「[洪水から守るために]防波堤を設ければ、海の侵食作用が別の場所に移動します」と彼は言います。
木材を建材に採用することで、都市の沈下を鈍らせることができます。写真:Di/Unsplash
木材利用という解決策
地盤沈下を元に戻すのは不可能であり、最善の対策は予防策を講じることです。海岸地への移住傾向が高まっている現状において、新しい移住者向けに必要となる住居は6割がまだ未建設であると推定されており、建築物に注目が集まっています。現在はコンクリートが建材の中心であり、コンクリートの製造は世界のCO2排出量の8パーセントを占めています。一方、木材は炭素を吸収し、従来の建材よりも軽量で、製造と組み立てに要するエネルギーと時間を削減できます。
「建設における木材の利用には、明らかに環境的な側面があります」と、UPM Timberのシニアバイスプレジデントである Antti Koulumies氏は述べています。